ランニング中や走ったらすねの内側が痛くなることはありませんか?
もしかしたらそれはシンスプリントと呼ばれるスポーツ障害の症状かもしれません。
シンスプリントはランニングやジョギングをされる方に多く、ランナーが悩まされるスポーツ障害としても有名ですね。
症状としては疲労骨折のような痛みと勘違いされることもありますが、その痛みの見極めをして対応していくことが必要になります。
適切な対応をしないと、痛みがずっと長引いてしまってスポーツが思いっきり出来ないと悩まれている方も少なくはありません。
そこで、今回はシンスプリントの原因と対処方法についてお伝えをさせていただきます。
目次
シンスプリントとは?
シンスプリントは、「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」と呼ばれています。症状としては、運動時の蹴り出しや踏み出しの時に「スネの半分から下の内側」で痛みを生じます。
これは、スネの骨(脛骨)の骨膜が炎症を起こしているために痛みを生じている状態になります。

一般的には過労性障害とされていて、長距離を走っているランナーや、運動をし始めた運動素人の方がよくなる症状の一つになります。
・長距離ランナー
・急な激しい運動をし始めた成人
・室内でのジャンプスポーツ競技者
いずれにしても、スポーツをしている方に多いスポーツ障害と言えるでしょう。
ランナーに多いとされますが、バレーボール、バスケットボール、新体操などの室内競技でジャンプ動作を何度も行うようなスポーツでも起こる症状です。
特に社会人で普段スポーツをしていない方が、スポーツをやり始めた時には起こる可能性がありますね。
シンスプリントの症状


シンスプリントはその名のとおり過労性の骨膜炎のため、骨膜の炎症が起きます。
骨膜は骨を覆っている膜のため、負担がかかる状態が続いて炎症あれば、いずれは疲労骨折に移行していきます。
シンスプリントの痛みは、最初は運動をしている時に「なんだかスネの内側がジーンとする」ような鈍い痛みがありますが、これがひどくなると「ズキズキ」とした痛みに変わってきて、歩くだけでも痛いといった状況になる可能性があります。
現在、スネの内側が痛いという方は当てはまるかチェックをしてみてください↓
・走ったりするとスネの内側がズーンと痛くなる
・歩いている時は大丈夫だが、スポーツで度々痛くなる
・ふくらはぎとスネの骨の間やふくらはぎの奥を押さえると圧痛がある
・歩いていても痛い
・歩いていてもズキズキする
・安静にしても痛い
まだ走っている時だけ少し痛い程度であれば、症状の初期かもしれませんが、歩いていても痛い状態やズキズキと痛い状態へ変化した場合、もしかしたら重症化している可能性があるかもしれません。
そのため、シンスプリントが重症化して疲労骨折に移行する前に、ふくらはぎやスネの内側に痛みが続いていると思ったら、一度病院へ行って診てもらう方が良いでしょう。
シンスプリントと疲労骨折との違いは?
シンスプリントは初期症状では腱膜の炎症なので、初期の段階ではレントゲンには写りません。
しかし、重症化をして骨膜に炎症が起きて疲労骨折が起きている場合はレントゲンに写ります。
痛いことがあったけど、病院には行かずに安静にしておいたら治った。
数年後に下腿のレントゲンを撮ったら骨膜反応が確認できて、以前疲労骨折をしていただろうと説明を受ける方もおられます。
しかし、レントゲンで明らかな疲労骨折を認めない場合でも、初期の疲労骨折になっている可能性があります。
その場合は、レントゲンでは分からない為、MRI検査にてシンスプリントか初期の疲労骨折かを区別する必要があります。
ご自身で痛みの強さや痛くなる頻度で病院やクリニックへ行かれる方もおられますが、痛みが何日も続いている場合は一度病院へ行って診てもらうことをおすすめします。
シンスプリントの原因
シンスプリントは、スネの骨の膜の炎症というお話をしました。
ではなぜ骨膜の炎症が起きるのか?というと、ふくらはぎの奥にある筋肉(ヒラメ筋、後脛骨筋など)の過剰な負担、使いすぎが原因となります。要するにオーバーユースシンドローム(使いすぎ症候群)ということです。
骨は骨膜で覆われていて、その骨・骨膜へ筋肉が付着をしています。
筋肉にも「筋膜」があり、単純に骨と筋肉がくっ付いているわけではなく、筋膜も骨や関節と繋がりをもち、骨と筋肉が繋がりを持っています。

そのため、ヒラメ筋や後脛骨筋といったふくらはぎの深部にある筋肉に大きく負担がかかってしまうような状態になると、その度に筋肉・筋膜によって骨膜が引っ張られます。
それが原因で炎症となり、痛みが出るのがシンスプリントの原因となります。
ではなぜ上記の筋肉へ負担がかかるのか?をご説明します。
原因1.単純な運動量の増加や運動の質の変化
まず最初に考えられるのは、運動をし始めた方やスポーツを普段からしている人にも共通して言えるのが「前より運動量が増えたこと」が挙げられます。
スポーツをし始めた方は何もしていないところから運動をしているので、運動量が増えたことはわかりやすいと思いますが、普段からスポーツをしている方でも練習時間が増えたことも負担になります。
例えば..
「バレーの試合で自分ばかりがアタックを打たないといけない状況になった」
「ランニングの距離と時間を増やした」
「いつもより多めに走ったり、走るコースを変えた」
このような事柄でも運動量や運動の質が変わるきっかけになります。
さらに深掘りをすると…
・昨日の夜は寝られなくて寝不足だけどいつもと同じ練習メニューをこなした
・体が重くて硬い日だったけど、いつも通り練習をした
このようなケースでも「いつもの自分」よりも体の柔軟性(筋肉・関節)が失われている状態で同じ負担がかかれば、トレーニングでの負担は蓄積しやすく、筋肉へ負担がかかりやすくなっている可能性はあります。
特に寝不足な状態は自律神経の乱れも出ているため、背骨の硬さが顕著に出てしまうことで人間のバネのような柔軟性も失いやすくなります。

普段はバネのように働いてくれる背骨が衝撃を吸収してくれますが、寝不足などによって体の柔軟性を失っている時には体幹・背骨の衝撃吸収機能が低下することで、腕や足で衝撃を吸収しないといけなくなります。
この衝撃というのは、上からは重力で下からは床反力のことです。
背骨が柔軟性を失った状態で、走る・ジャンプをした時に足が衝撃を強く受けてしまうため、四肢の筋肉がその衝撃吸収の負担を背負うため、痛みに繋がる可能性があります。
このような、運動の量の変化や運動の質の変化によって、後脛骨筋・ヒラメ筋・前脛骨筋などに大きな負担がかかってしまうことで脛骨の骨膜を過剰に引っ張ってしまい、炎症が起きることでシンスプリントにつながる可能性があります。
原因2.足部のアーチが崩れていること
シンスプリントはヒラメ筋や後脛骨筋の過負荷で最終的に骨膜を過剰に引っ張ってしまい炎症が起きて痛みが出ていることをお伝えしました。
そこで、ふくらはぎの筋肉は足部のアーチによっても筋肉の負担が変わります。

特に、足のアーチが落ちている扁平足の方、シューズの内側がすり減ってしまう方は足のアーチが崩れてしまうことで、足〜すねの力伝達が上手くできないために、歩く・走る・ジャンプの時にはふくらはぎの筋肉を過剰に使わないといけない状態になりやすいです。
その結果、スネ周りの筋肉に過剰な負担がかかるので、筋肉へ負担がかかり、骨膜を過剰にひっぱってしまうことで炎症を起こしやすく、シンスプリントになりやすくなります。
原因3.筋膜の硬さができたこと
シンスプリントの原因はスネ周り、ふくらはぎの周りの筋肉に強い負荷がかかり続けることが原因ですが、これは単純に筋肉だけの問題ではなくて、筋膜の硬さが大きく影響することもあります。
「筋膜」というのは筋肉を包む膜のことですが、ふくらはぎ周りだけではなく、全身の筋肉はもちろん内臓や神経、骨との繋がりもある、全身で1枚のボディースーツのように繋がっている組織になります。
そして筋膜が重要なのは…
・感覚や痛みのセンサーが豊富
・筋収縮に重要な筋紡錘とつながっている
・筋膜の硬さは波及する
以上のようなことから、筋膜が硬くなることで痛みのセンサーが反応しやすくなり痛みが出る、力が出にくい状態になることが考えられます。
さらに、下腿には「筋間中隔」という足首を伸ばすための筋肉、曲げるための筋肉で大きく分けるための分厚い壁があります。

下腿の筋肉は3つの筋間中隔によって4つの筋肉の区画に分かれているのですが、実は筋間中隔というのは「筋膜」から続いた組織になります。
今までのお話を聞いていると、「結局何かしらの影響で筋肉に負担がかかってしまうことがよく無いんだ」と思ってしまうかもしれません。
この点が、スネやふくらはぎ周りの痛みにも大きく関連してくる部分になります。
なので、筋膜というのは筋肉自体を包む膜でもあり、下腿の筋間中隔としても役割を果たしている重要な組織です。
ここで想像をしてみてほしいのですが、ご自身の上腕二頭筋に力を入れると「もりっ」と力こぶが出てきますよね。このように筋肉は力を入れることで縮みます。

この筋肉の特性上、筋肉を包む膜である筋膜が硬くなっている場合、ふくらはぎ周りの筋肉を隔ている筋間中隔が硬くなっている場合には、力を入れた時に筋肉は縮もうとしても周りの筋膜に圧迫をされて上手く縮めなくなります。

要するに力が入れにくくなるけど、なんとか頑張って力を出そうとしている状態になるということです。
ではこれが、筋膜を包む膜とさらに筋肉を隔てる筋間中隔までも硬くなっていた場合を考えると、想像するだけでも負担が大きい状態だということがお分かりになるかと思います。
そして、筋膜の中の筋周膜には筋紡錘が存在しているため、筋膜が硬くなることで筋紡錘が正常に反応できなくなることでも筋肉は適切に収縮ができなくなります。
さらには筋膜には感覚や痛みのセンサーが豊富なために、筋膜が硬くなることで通常では反応しない痛みのセンサーが反応するようになり、簡単な動きや運動でも痛みを感じてしまうようになると言われています。
ここまで聞くと「じゃあふくらはぎ周りの筋膜が硬いと痛みを出している可能性があるのか」と思うかもしれませんが、これは半分正解で半分不正解です。
なぜなら、筋膜は全身でつながっている為、膝や股関節、お腹周りに筋膜の硬さが出来た場合でも、硬くなった筋膜の引っ張った先で痛みセンサーが反応することで、スネやふくらはぎ周りの痛みの原因になっている可能性があるからです。
(筋膜の硬さや症状の出方には個人差があります。)

このように全身にある筋膜の硬さが、ふくらはぎやすね周りの痛み、シンスプリントのような痛みに繋がっている可能性があります。
筋膜の硬さが出来る原因は、使いすぎや過去の怪我等がありますが、過去の記事で詳しくご説明をしていますので、ぜひ一度読んでいただけると幸いです。
→筋膜の硬さが出来る原因の詳細はこちらをタップ!!
シンスプリントの治療方法
シンスプリントの一般的な対処方法をお伝えします。
・安静、電気療法
・ストレッチ、筋力トレーニング
・インソール
・拡散型体外衝撃波治療
・薬物療法
現状は以上のような対処方法があります。
基本的には負担がかかっていることが原因と考えられているため、まずは「安静」を取ります。
その上で、負担のかかっていた筋肉(後脛骨筋など)のストレッチや、ふくらはぎや足の筋肉に負担が掛かりにくい身体作りとして姿勢改善のトレーニングなどを行なっていきます。
もしくは、インソールにより足部の安定性を確保し、後脛骨筋の負担を減らすことで痛みが軽減するというケースもあります。
しかし、それでも良くならない場合には局所注射や、最近では体外衝撃波を行なっているところも多いかともいます。
基本的には安静にして一度は改善されるケースが多いかと思いますが、改善に長期間(約6ヶ月程度)かかってしまったり、一度は改善されても運動し始めたらまた痛みが出てしまうといったケースもあります。
シンスプリントの痛みに筋膜調整が有効なケースも
筋膜は身体の痛みの原因となる
シンスプリントはスポーツによる過労性障害なので、基本的には「患部を休めること(保存治療)」が治療の中心となります。保存療法を行う事で改善される期間は個人差がありますが、6ヶ月程度の安静期間を経て改善されるケースが多いかと思います。
しかし、安静だけでは改善に向かわないケースもあることや、半年もスポーツが出来ないことがスポーツ選手にとっては大きなメンタルの不安材料にもなります。
小学生、中学生、高校生などの学生の部活動やクラブをされているお子様たちはスポーツの上達も早いので、仲間たちがどんどん上手くなっていく間に安静を強いられてしまうのは本人も親御さんも心苦しいですよね。
そこで一般的な対処方法を行なっても改善しなかった時にはさらに不安になってしまうことも少なくはないです。
ではどうしたらいいのか?と考えた時にもう一つ方法があります。
それは、筋膜をほぐす事(筋膜リリース)です。
なぜなら、近年では身体の痛みの原因として「筋膜」が影響していることが分かってきているからです。

深部筋膜とその様々な構成要素が、様々な病状や疼痛症候群における疼痛の原因となる可能性があることを示している可能性があります。
(Weiss K, Kalichman L. Deep fascia as a potential source of pain: A narrative review. J Bodyw Mov Ther. 2021 Oct;28:82-86. doi: 10.1016/j.jbmt.2021.07.007. Epub 2021 Jul 17. PMID: 34776204.)
そして、シンスプリントはふくらはぎにある「後脛骨筋」の負担と言われていますが、筋肉を包むのは筋膜であり、ふくらはぎの筋肉を隔てているのは筋間中隔という筋膜から続いて出来ている組織になります。
そして筋膜は筋肉に比べて8〜10倍痛みセンサーが多いと言われており、骨(骨膜)とのつながりもあります。
その為、筋膜が硬くなる事でも筋肉は動きにくくなり負担になりやすく、骨とのつながりもある為、シンスプリントで最終的に疲労骨折につながってしまうくらい骨への影響が出てしまうことも1つの可能性としてあると考えています。
ここで多くの方が「じゃあふくらはぎの筋膜をほぐしたら改善するかもしれないのか」と思われると思います。
これは半分正解で半分不正解になります。
その理由は、筋膜が全身で繋がっていることにあります。
以下の画像を見ていただけると痛みが出るいつくかの流れをイメージしていただけるかと思います。

このように、使いすぎによる「ふくらはぎ自体の負担」や足首や膝の怪我の影響で筋膜が硬くなってしまった結果、痛みが出ている「痛みのある付近に原因となる硬い筋膜がある」ケース。
もう一つは、過去に呼吸系の症状(喘息(ぜんそく)、肺炎など)や、胃腸、膀胱などの内臓の不調が原因で筋膜が硬くなってしまったことで、体幹から筋膜の硬さが足の方へ繋がっていく事で、「離れたところの硬い筋膜が痛みを出している」ケースがあります。
例として2つ挙げさせていただきましたが、過去の怪我などが膝や股関節、肩にあってもその怪我を起点に筋膜の硬さが広がった結果、ふくらはぎで痛みを出しているというケースもあります。
この為、まずは痛い部分の周りの筋膜をほぐしてみることは試すべきだと思いますが、膝やお腹、胸などの離れたところの筋膜が硬くなっていることが原因の可能性もあるために全身的に見ていくことが必要になります。
シンスプリントに有効な筋膜ポイントをご紹介
今回は、シンスプリントで痛みがある方が筋膜による痛みをご自身でチェック&ケアできるようにふくらはぎや足周りだけにはなりますが、動画でご紹介をさせていただきます。
ご紹介の動画では「有痛性外脛骨の痛み」に有効な点としてご紹介をさせていただいていますが、シンスプリントで痛い方でもよく筋膜が硬くなっているポイントなので、ぜひ実践をしてみてください。
いかがでしたでしょうか?
「鋭い痛みがする」「他とは違って硬い感じがする」場所は筋膜の硬さがあるポイントになりますので、見つけたら軽い圧をかけてスライドをさせて筋膜をほぐしてみてください。
(※骨に対しては強く圧をかけたりしないようにご注意をしながらお試しください。)
疲労骨折を疑ったらすぐ病院へ
シンスプリントはスポーツ、運動をしている時にふくらはぎのところに痛みが出ますが、重症化しているケースでは脛骨の疲労骨折が起きている場合があります。
「歩いているだけで痛い」
「スネの内側がズキズキ痛い」
「安静にしていてもずっと痛い」
このような症状がある場合は、ご自身でのストレッチやマッサージ、ただ安静にするだけではなく、まずは病院で診てもらうのが最優先になります。
シンスプリントの予防
スポーツ障害である「シンスプリント」の予防として自分でできることは“ストレッチやアイシング”です。
筋膜の観点からも、ストレッチ等は使い過ぎによって負担のかかった筋膜の柔軟性も出してくれると考えていますので、日頃からの足の筋肉やふくらはぎ、太ももや股関節の筋肉のストレッチや柔軟運動をしていくことがシンスプリントの発症防止に繋がります。
また、猫背や反り腰の方も「背骨が使えない」「体幹が使えない」ことで、腕や脚を四肢末端で過剰に力を入れて体をコントロールし始めるため、身体の末端部分の筋肉に負担がかかりやすくなり、今回のシンスプリントのような症状が出てしまうことも原因として考えられます。
そのため、姿勢改善運動を行うこともシンスプリントの予防としては良い選択になります。
今回の記事ではそのトレーニングまでご紹介をすると長くなってしまうため、また別の記事でご紹介をさせて頂こうと思います。
何をしても、ずっとシンスプリントが治らない方へ
早く痛みを改善したい
今回ご紹介させていただいた、シンスプリントは筋膜へのアプローチで改善をする可能性が高い症状の一つであると考えています。
そのため、もしシンスプリントの痛みでお悩みの場合は
ぜひ一度、当院へご相談ください。
実際に、今回動画でご紹介をしたポイントだけでも
・スネの痛み
・股関節の可動域や痛み
・足の裏の痛み
このようなお悩みが改善したケースも経験をしております。
当院では全身150箇所以上の深層の筋膜へ効率よくアプローチする筋膜調整を行なっています。
そのため、ストレッチや筋膜ローラー、機械による筋膜リリースでは難しいポイントも細かくアプローチが可能です。
お気軽にご連絡、ご相談をお待ちしております。
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